アップル、空間コンピュータ「Vision Pro」第2世代を投入 M5搭載で粘り強く市場開拓

アップルは自社設計の新チップ「M5」を搭載したiPad ProとMacBook Proに続き、空間コンピュータ「Apple Vision Pro」の第2世代モデルを昨年10月に発売した。価格は59万9800円からで、初代から据え置いた。

外観は初代と変わらず、搭載チップがM2からM5へ進化した点が最大の違いだ。ディスプレイは片目4Kのまま変更はないが、M5の処理能力により最大120Hzのリフレッシュレートに対応、レンダリング量も約1割増えた。筆者が2週間試用したところ、画面や文字の描写が細やかになった印象を受けた。

機械学習でユーザーの写真を立体化する機能では、初代と比べて処理の俊敏さが増した。ビデオ通話時に自分の分身を投影する「Persona」も、再現性が向上したと感じる。AI処理に強いM5の恩恵とみられる。

付属バンドも改良された。従来は後頭部のみで本体を支えていたが、頭頂部と後頭部の2カ所で支える構造に変わり、574グラムの本体重量を感じにくくなった。

空間コンピューティングの実用面では、Macの仮想ディスプレイとの連携が便利だ。MacBook Proを装着状態で見つめると画面を目の前に大きく表示でき、ウルトラワイドで複数ウィンドウを並べての執筆作業がはかどる。iOS 26で追加された、壁にウィジェットを埋め込む機能も活用すれば、時計や株価、降雨予報などを周囲に配置できる。ただしウィジェットの種類はまだ少なく、拡充が課題だ。

昨年2月の米国発売以降、Vision Proは爆発的なヒットには至っていない。それでもアップルは第2世代を投入し、ハードウェアとOSを着実に磨き続ける構えだ。今後チップとAI処理がさらに進化すれば、搭載カメラやセンサーは削減でき、軽量な「Apple Vision Air」や、メガネ型デバイスへの発展も視野に入る。

アップルは10年前、後発ながらApple Watchを投入し、粘り強い改良でスマートウォッチ市場の覇権を握った。空間コンピューティングでも同じ戦略で、10年後の独走を狙っているとみられる。